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嵐の櫻井さん/Sho Sakurai of Arashi

 もう10年以上前の仕事の話です。その頃はまだ日本のテレビ番組の仕事を多く担当していました。

 ある日、ニュース番組より現場通訳を頼まれました。行くと、嵐の櫻井翔さんが。彼がインターナショナルスクールにて、アメリカの選挙戦について学生さんたちにインタビューをするという内容でした。

 その頃は報道番組の翻訳も多く行っていて、内容としてはそう言った翻訳作業からの知識も役に立ち、スムーズにいった記憶もあります。そしてそれ以上に印象に残ったのが、櫻井さんの「まっとうさ」でした。

 日本のテレビは、ついにわたしは好きになれませんでした。いわゆる「有名人」の司会者やゲストが来ると、お偉い肩書きのスタッフがエレベーターまでお出迎え、お見送り。扱いも、大仰。かと思うと、一アウトソーシング先であるわたしのような翻訳者には、人間としてどう考えても失礼な態度を取る人もいて、ラジオではそういう人はついぞ見かけなかったのに、どうして日本のテレビ業界はこんな風なんだろう? といつも疑問でした。ちなみに、海外のテレビ業界では、日本のような異様な雰囲気はありません。

 さて、その日の通訳も、スーパースターの嵐のメンバーなので、もちろんスタッフの扱いは櫻井さん中心に回ります。複数の場所で撮影をしたのですが、図書館で、椅子は学生と櫻井さんだけに用意されました。これって、地味にやりづらいんです。物覚えが悪いわたしは、通訳の時はキーワードをひたすら書いていきます。そのキーワードを見ながら、話者が何を喋ったかを思い起こしていくのです。それが立ったままだと、できないわけではありませんがやりづらい。

 図書館なので椅子は周りにたくさんあるのですが、カメラに映らないけれども全員の声が聞こえる位置にいるよう指定されたわたしには、椅子を置く場所がありません。もういいか、椅子なしで文字を書こうと思った時、「通訳さんに椅子を」と櫻井さんが言いました。

 そうなると、すぐにスタッフが「はい!」とわたしに椅子を用意してくれます。

 髪の毛の先まできれいなアイドルが(本当に髪の先まできれいでした)、こんな気配りのできる人だということで、わたしはすっかり感心しました。わたしは有名人に会っても舞い上がることはジョージ・クルーニー以外はなかったのですが(笑)、櫻井さんのその気配りには、今でも感謝と尊敬の念を抱いています。それに、英語を勉強していた彼は結構英語も理解していたので、ご本人が理解した場合は英語を日本語には訳しませんねという話を事前にご本人としていたのですが、複雑な話の場合「今のはわからなかったです」と素直に訊けるところ。これも、「まっとうな」人だと思った一因です。

 ですので、櫻井さんと嵐の皆さんに関しては、遠くから、小さく応援しているのです。

Let me talk about a small encounter with Sho Sakurai of Arashi, one of the Japanese superstars from the boy idols agency Johnny's. I had interpretation work for a Japanese news show and he was one of the anchormen there. We went to an international school that day and I was called as an interpreter on site.

He was a righteous person. By what means is that he treats everyone the same. We were in the library room for an interview with some students. I was instructed to stand somewhere I wasn't on camera but bale to hear all of them. When I interpret, I prefer to sit because I have to take many notes of keywords I hear so that when I actually talk for the speaker in the other language, I can refer to it. And I am able to do it as standing, but doing it as sitting is much easier.

Everyone didn't care about the interpreter, of course. I was there thinking I would just need to work with my note on the shelf at least while standing. Then Sho Sakurai said "how about a chair for the interpreter?" Then the staff jumped getting me a chair because the superstar mentioned something caring about the interpreter, who otherwise, would have gotten no attention.

He was learning English too. Before the camera rolled, we confirmed that he would talk whatever he understood without waiting for me to interpret. But when he needed help, he would look at me asking straight, "I didn't understand that." That's another reason I think he was very righteous as a person. I don't see celebrities so special even though I spot them except George Clooney, but for Sho Sakurai, I am still impressed how he was that day a long long time ago and I wish him best on the journey of such a rough entertainment path.